フェイク情報とどう向き合うか。情報に振り回されないためにできること
- 3 日前
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近年、生成AIの発展により、誰もが簡単に画像や動画、音声を本物そっくりに生成できるようになりました。その一方で、実在しない出来事や、意図的に加工されたコンテンツがSNSやWeb上で拡散されるケースも増えています。
こうしたフェイク情報は事実情報よりも拡散スピードが約6倍速いという特徴を持ち、日々発生・拡散されていますが、特に選挙期間中は増えやすい傾向にあります。選挙は、人々の関心を集めやすいトピックであることに加え、候補者や政党が精力的に情報発信を行うことで、生成のもととなる素材も多く流通するためです。
また、選挙期間には、事実、他人の意見、切り抜き、フェイクコンテンツなど様々な種類の情報が混在します。私たちは、こうした情報環境の中で、どのように情報と向き合えばよいのでしょうか。本記事では、技術的な視点と、日常の中での情報との接し方について整理します。
なぜ選挙期間はフェイク情報が増えやすいのか
選挙期間中にフェイク情報が増えやすい背景の一つには、SNS上で「注目を集めること」が価値や収益につながる構造があります。現在のSNSでは、再生数や表示回数、フォロワー数が広告収益やアカウントの影響力に直結しています。そのため、多くの人の関心を引く投稿ほど評価されやすい仕組みの中で、フェイク情報は「注目を集めやすい手段」として利用されやすくなっています。
こうした構造に加えて、選挙には次の3つの特徴があることで、特にフェイク情報が発生・拡散しやすい環境が生まれています。

① 人々の関心が集中しやすい
1つ目は、選挙が人々の関心を集めやすいトピックである点です。選挙は、今後の社会全体の方向性を左右する重要なイベントであり、多くの人が強い関心を持っています。そのため、SNSやニュースを積極的にチェックし、関連情報を収集する人も自然と増えます。特にSNSでは、アルゴリズム的な要因から関心が集中することで、該当の投稿は通常よりも多くの人の目に触れやすくなります。その結果、真偽にかかわらず情報が拡散されやすい状態になっています。
② 生成のもととなる素材が豊富に流通する
2つ目は、フェイクコンテンツを作るための素材が大量に出回る点です。選挙期間中には、候補者の演説映像や街頭活動の写真、インタビュー動画、SNS投稿など、さまざまな画像や動画が日常的に発信されます。こうした素材は、フェイクを作る側にとって加工・編集・生成のもととなり、素材が豊富であるほど、本物と見分けがつきにくいフェイクを作りやすくなります。
③感情に訴えるコンテンツを作りやすい
3つ目は、選挙が人々の感情と結びつきやすいテーマである点です。政治や選挙の話題は、人々の怒りや不安、期待、失望といった感情を強く刺激しやすい特徴があります。こうした感情を揺さぶる内容と接した際に、人間は冷静な判断がしづらくなります。そのため、感情に訴えるように加工されたフェイクコンテンツは、「バズ」を狙う構造と相性が良く、短時間で広く拡散される傾向があります。
選挙期間中に見られるフェイクコンテンツの例
実際に、選挙期間中にはさまざまな形のフェイクコンテンツが確認されています。
例えば、候補者の発言を切り取って文脈を歪めた動画や、存在しない出来事を本当に起きたかのように見せる画像、街頭インタビュー風に作られた架空映像などです。


近年は生成AI技術の進化により、人間の目では真偽を判断することが難しいケースも多くなってきています。こうしたコンテンツは、事実と誤情報の境界を曖昧にし、受け手の判断を混乱させる要因になります。
以下では、普段フェイク検出技術の開発に携わる鈴木さんに、フェイク情報と接する際のポイントや注意点などについてお伺いしてみました。
フェイクコンテンツかを確認するためには?
Q:画像や動画のフェイクについて、見破るポイントはあるんでしょうか?
A:まず前提として、フェイクの特徴はケースバイケースです。生成方法によって特徴がそれぞれ異なるので、「ここを見れば必ず分かる」というものは正直ありません。
ただし、ケースバイケースとはいえ、いくつか共通して注意したいポイントはあります。
例えば、画像や動画の中に、生成AIツールや編集ソフトのロゴ、透かしのような表示が入っている場合は、その時点で生成や加工されたコンテンツである可能性が高いと考えられます。
また、総じて描いたり生成するのが難しそうな部分には、生成AIの粗が出やすい傾向があります。具体的には、影や光の向き、木や水などの自然の描写、複雑な動きのある部分などです。傾向としては、表情や口元などの人の顔に関連する部分や、背景にも違和感が出やすいですね。口元や目、輪郭など、生成された部分とそうでない部分の境界に、解像度や質感の違いが現れることがあったり、動画の場合は、顔の前を何かが遮った時の後ろ側にある被写体に微妙なずれが生じていたりすることがあります。
動画であれば、音声と口の動きがずれていないかも重要なチェックポイントです。話している内容と口の動きが合っていない場合は、音声や映像が後から合成されている可能性が考えられます。
音声の場合は、専門用語や固有名詞、あまり一般的でない言葉の発音やイントネーションにも注意してみてください。AIは学習量の少ない単語になると、不自然な発音になったり、抑揚がおかしくなったりすることがあります。擬音語なども違和感が出やすい部分ですね。注意してよく聞いてみることが大切です。
ただ、最近は精度も上がっていて、ほとんど違和感がないものも増えています。
そのため、必要に応じて、フェイクかどうかを検証するツールなど、技術の力を借りることも有効な選択肢の一つです。人の感覚と技術の両方を組み合わせて判断することが、これからはより重要になってくると思います。
いずれにしても、情報を鵜呑みにせずに自分で調べる姿勢が大切ですね。

Q:今後SNSで情報を見るときに、意識すべきことは何でしょうか?
A:一番大事なのは、刺激的なコンテンツを見たときや、感情が動いたときほど一度冷静に立ち止まることです。怒りや不安などを強く感じる投稿ほど、冷静さを失って、事実確認をせずに拡散してしまいがちです。
まずは、「これは事実なのか、意見なのか、切り抜きなのか、はたまたフェイクコンテンツなのか」を意識することが大事だと思います。
Q:情報の真偽を確認するポイントはありますか?
A:誰が発信しているのか、いつの情報なのか、元の情報源はどこなのかを見ることが大事です。信頼できる情報の出どころまでたどれないものは、慎重に扱うべきだと思います。
加えて、画像や動画の場合は、過去に別の文脈で使われていないかも確認すると有効です。Googleレンズなどで画像検索すると、同じ素材が過去の別の出来事として流用されていないかを調べられます。
また、発信者のプロフィールや過去の投稿傾向も見ておくと判断材料になります。普段から出所不明の情報が多いアカウントは注意したいですね。
それと、家族や友人など身近な人から共有された情報でも鵜呑みにしないこと。善意で広まる誤情報も多いので、身近で信頼できる人からの情報であったとしても一度立ち止まって確認するのが安全です。
また、SNS上ではコミュニティノートのような補足機能が付くこともあるので、そうした情報も参考にすると良いと思います。
最後に、自分の考えに近い情報ほど信じやすいので、「自分が信じたいから信じていないか」も確認できるようになるとより冷静に判断できると思います。
鈴木さん、ご回答ありがとうございました!
まとめ
生成AIの進化により、フェイクコンテンツは今後さらに巧妙になっていくと考えられます。選挙期間は、注目を集めやすく、素材も豊富で、感情に訴える情報によって、フェイクコンテンツが特に広がりやすい環境がそろっているため、特に注意が必要です。
しかし、私たち一人ひとりがすべての情報を正確に見抜くことは、現実的には簡単ではありません。だからこそ重要なのは、「完璧に見抜くこと」ではなく、「冷静に情報と向き合うこと」です。
刺激的な投稿や、不安をあおるような情報に触れたときほど、一度立ち止まり、その情報の出どころや背景を確認する姿勢が求められます。分からない情報は、判断せず保留することも選択の一つです。特にSNSでは、誰もが情報の受け手であると同時に、発信者にもなります。自分の行動ひとつが、誤った情報の拡散につながる可能性があることを意識することが、健全な情報環境を守る第一歩です。
選挙という重要な機会だからこそ、冷静に立ち止まり、疑いの目を持って情報と向き合う姿勢を大切にしていきたいものです。


